「カラオケ行こ！」の舞台を歩く──その場所には、私たちの青春が落ちている

何気なく口にした「カラオケ行こ！」というひと言が、人生のページをめくってしまう。
2025年7月24日にアニメ放送が始まる本作は、すでに映画化もされた注目作です。
その物語に息を吹き込んだのは、脚本や演出だけではありません。現実の街の空気、景色、匂いが、彼らの“あの時間”を作っていたのです。

この記事では、原作・映画・アニメそれぞれに登場した「カラオケ行こ！」の舞台となるロケ地やモデル地を、心に触れるように紹介していきます。

ただの「撮影地紹介」ではありません。
これは、彼らが生きた街を、私たちがもう一度生き直すための記事です。

山梨・甲府、あのふたりが息をしていた場所

映画「カラオケ行こ！」を観終えたあの日、私は真っ先に地図を開いていました。
そこに映っていた街が、ただの“背景”じゃないと気づいたからです。

その場所とは——山梨県甲府市。
駅前の喧騒、少し寂れたアーケード、誰かが歌っていた夜のカラオケ店。それらすべてが、この街には息づいています。

ミナミ銀座、光と影が交差する通り

作中に登場する「ミナミ銀座」。
そのモデルとなったのは、甲府市中央の南銀座通りです。

このアーケードは、どこか懐かしい昭和の香りを残しながらも、今も誰かの「日常の舞台」として動いている場所。

映画ではこの場所で、笑いも、戸惑いも、ほんの少しの勇気も、すべてが交差していました。

「サロン・レイ」前、あの出会いの瞬間に

聡実と狂児が初めて交差した場所。それが、甲府市中央の「サロン・レイ」前の路地です。

この路地には、不思議な静けさが漂っていました。
人の縁が生まれる瞬間の“空白”のような場所。
映画を観た人なら、足を踏み入れたとたんに胸の奥がざわつくはずです。

ラウンジはる美、人生が響いた夜

「スナックカツ子」のモデルとなった、ラウンジはる美。

この場所では、ただ歌が流れていたわけではありません。
迷い、焦り、誤魔化せない本音——
そういったものがマイクを通じて“声”になっていた夜が、そこには確かにありました。

サテライト尚古園、街を見下ろすその時

映画終盤、ふたりが屋上で語らうシーン。
その舞台は、甲府市の「サテライト尚古園」の建物です。

屋上に立てば、あのカットとまったく同じ景色が広がる。
ここで交わされた言葉は、街の音と混ざり合って、静かに胸に染み込んでくるのです。

仲見世商店街、非日常が迷い込む路地

あの“宇宙人”が現れた路地、それが甲府銀座ブラザー横の仲見世商店街です。

この細く入り組んだ道は、まるで物語が生まれやすい“隙間”のようでした。

現実と空想が交じり合うには、理由なんていらない。ただこの路地を歩いてみてください。
見慣れたはずの街の奥底に、きっと誰かの声がまだ残っています。

千葉と神奈川、物語が広がった“もうひとつの舞台”

「カラオケ行こ！」の根っこが甲府にあるなら、枝葉は首都圏にまで伸びていました。
千葉や神奈川に散らばった撮影スポットは、作品に多層的な深みと現実味を与えてくれた“もうひとつの教室”のような場所です。

合唱コンクールの緊張感、静かな校舎の空気、都市の片隅で交わされる言葉——これらの背景は、ただの装飾ではありません。
画面の裏側で、確かに“あの子たち”が過ごしていた時間があったのです。

市原・カラオケアーサー、歌が育った場所

狂児さんが、聡実くんに歌を教える——その場所が、千葉県市原市の「カラオケアーサー市原店」です。

「カラオケ王国」として登場するこの店舗は、実際の外観や内装がそのまま使われており、まるで映画の中に入り込んだかのような錯覚を与えてくれます。

防音壁に囲まれた空間で、ただ静かに声を出す——その行為がどれほどの勇気を必要とするかを、私たちは知っています。

幕張・合唱の記憶が残る研修センター

大きな節目となった合唱コンクール。
その舞台は、千葉市美浜区の「幕張国際研修センター」のホールでした。

舞台のライト、座席の配置、天井の高さまでもがリアルに再現されており、静かな緊張と解放が交差する空間として映像に刻まれています。

訪れると、舞台の上ではなく、客席にいたはずの“自分”を思い出すかもしれません。

横浜・早渕中学校、思春期の匂い

聡実くんが通う学校は、神奈川県横浜市の「市立早渕中学校」が使われました。

校門をくぐり、廊下を歩き、音楽室の扉を開ける——
それだけで、あのときの鼓動が甦ってくるような場所です。

立ち入りには配慮が必要ですが、静かに外観を眺めるだけでも、心は過去と未来を往復します。

伊勢佐木町・都市の音が聞こえるビル

狂児さんが訪れる音楽教室の入口として使われたのが、横浜中区「ザシティベルシティ伊勢佐木町店」です。

コンクリートとガラスに囲まれた都市の無機質さの中で、彼は声を探していた。

現実にはパチンコ店が入る商業ビルですが、そこに「音楽教室」という設定を重ねることで、映画は私たちに“選択肢”を差し出してくれました。
「どこでだって、始めていいんだ」と。

2025年、もう一度「カラオケ行こ！」に出会う場所へ

あのふたりが帰ってきます。
2025年7月24日、アニメ版「カラオケ行こ！」の放送が始まります。

映画を観た人も、原作を読んだ人も、そして“初めて出会う人”も——その誰もが物語に“自分”を重ねられるような世界が、またひとつ描かれようとしています。

舞台のリアルさが心に響く理由は、それがただの背景ではなく、登場人物たちの感情を映し出す“鏡”だから。
その想いをアニメでも引き継ごうとするスタッフの情熱が、すでに画面から溢れています。

2025年夏、また新たな歌が始まる

制作は、緻密で繊細な作画に定評のあるアニメ工房。
そして監督を務めるのは、静かな情景描写に定評のある中谷亞沙美氏。

脚本には、「プリキュア」シリーズなどで知られる成田良美氏が参加しており、原作のやさしさと、どこか奇妙でユーモラスな空気を丁寧に拾い上げています。

放送は全国ネット、同時配信も予定されており、より多くの人が“あの声”に触れる夏になるでしょう。

アニメが描く、あの街の“もう一つの顔”

アニメ版でも、南銀座のアーケード、カラオケボックス、静かな屋上の景色が再現されていることが、すでに予告映像などで明かされています。

そのなかでも特に印象的なのは、キャラクターたちが歩く細い路地や、商店街のざらついた空気。
実写映画の“質感”とはまた違う、アニメだからこそ可能な“光と線の表現”が、場所の記憶を呼び起こしてくれます。

これから訪れる街、まだ訪れたことのない人にとっても、このアニメは“行く理由”をくれるはずです。

まとめ：あの歌声が聞こえる場所へ——「カラオケ行こ！」舞台巡りのすすめ

「カラオケ行こ！」という物語が私たちに教えてくれたのは、どんな些細な出会いも、どんな静かな街も、きっと誰かの人生を変える舞台になるということでした。

山梨県甲府市をはじめとする街角は、ただの“背景”ではありません。
聡実くんと狂児さんが、悩み、笑い、声を出した場所。
その一つひとつが、いまも静かにあなたの訪れを待っています。

その場所に立ってみると、作品を観たときの感情がふっと蘇るはずです。

この記事で紹介したスポットを巡るだけでなく、あなた自身の“物語”をそこに重ねてみてください。
もしかしたら、聡実くんたちと同じように、あなたにも誰かと“何か”が始まる瞬間が訪れるかもしれません。

そしてアニメ版が始まる2025年の夏。
また新しい「カラオケ行こ！」の風景が、私たちの記憶に加わります。

だからどうか、物語の続きは、画面の向こうだけじゃなく、あなたの足で、心で、確かめに行ってください。